いつの間にか、溺愛。
「おーい。蒼、行くぞ〜」

外に出ると三次会に行くであろうお友達集団が呼んでいた。

「じゃ、よろしくね?」

「……うん。」

2人でその集団に駆け寄る。

「お前ら、すまん。この子と飲み行く事になったから俺は辞めとく〜」

作戦は、こうだ。

さっきの二次会で意気投合して今から2人で飲みに行く程。

お互い隣同士でずっと話していたから怪しまれはしないだろう。

………という計画。

だが、まぁそうそう上手くいく訳もなく。

「祐樹に続き、お前も抜けがけか?」
「お前らだけズルいぞ〜」
「てか、みんなで飲んだら早くね?」
「おっ!お前たまにはいい事言うじゃん」

あらら。

話が急展開。

もはや苦笑いもいいとこだ。

てか私、飲まないからね?

張本人の蒼くんは苦笑いしながらこちらを見ている。

いやいや、頑張れよ。

もう…… 仕方ないなぁ。

「あのっ……」

「ん?鈴…__?」

そのままお友達集団に向かって一言投げかけた。

「あの、今日だけ蒼くん借りてもいいですか?」

そう言って彼のスーツの腕を少し引っ張った。

彼の顔を見上げると、ポカーンとした顔で私を見ていた。

だって、帰りたいんでしょ?

最後のトリデよ。

「……そっか。そうだよな〜」
「蒼で良ければ、どうぞどうぞっ」
「是非、煮るなり焼くなりして下さい!」

いや、焼かないけどな?

気をきかせ始めた賑やかな集団はそそくさ三次会へと行ってしまった。
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