いつの間にか、溺愛。
「今日は本当ありがとう。もう寝ろよ?」

「……はい」

「しっかり布団かぶって」

「私は子供じゃありません」

「ふっ、寂しくなったら電話して?」

「しませんってば!」

「俺が電話するかも。寂しくて」

「………はぁ、おやすみなさい」

「あっ、スルーしたな? ……じゃあおやすみ」


_____なんだ。

なんなんだ、このリア充感は。

リアル男子とデートの約束しちゃったよ。

携帯の『戸高 蒼』という履歴をまじまじ見て、夢じゃないと実感する。

まだよくわからない彼に少し惹かれている事実。

その事に自分でも気付いているから、なんだか胸の奥がザワザワする。

〜♪

また電話。

まだ何か言い足りない事でも?

「もしもし、まだ何か?」

「……鈴、どうしたの?」

電話の向こうは本日の主役の安子だ。

「あぁ、ごめん、間違えた。今日はおめでとう。主役は大変だったでしょ?」

「もう、くったくた。二次会まで来てくれたのに全然話せなかったから… 」

「ふふっ、相変わらず律儀ね。充分楽しませてもらったわ。ありがとねっ」

「……ところでさ。誰かいい人いた?」

本当の用件はそっちの様ね。

どこまでも面倒見がいいのやら。

「私よりも優香の方がいたみたいよ?途中で消えちゃったし… 」

「え?そうなの?だからか、電話しても出ないんだもん」

「今はまだお楽しみ中かもね?」

「そっかぁ… もし鈴も気になる人がいたら言ってね?旦那と全面協力するから!」

「ハハッ… 頼もしいわね、ありがとう。その時はよろしくね?……てかお疲れでしょ?私の事はいいから、早く寝ないと。明日からハネムーンじゃない?」

「うん。お土産買ってくるから帰ったらご飯行こう」

「楽しみにしてるわ。気をつけていってらっしゃいね。じゃあ、おやすみっ」

なぜか、彼の事を言えなかった。

大人になると恋愛話一つするのにも、色々と考えてしまっている自分がいた。

こんなんで、先が思いやられるな。
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