いつの間にか、溺愛。
「ねぇ?本当にここでいいの?」

「ここで?…じゃなくて、ここがいいのっ」

大衆漂う雰囲気の決して綺麗ではないお店。

小洒落たお店でもイタリアンでもフレンチでもない。

サラリーマンでごった返した居酒屋だ。

「大将っ とりあえずビール2つ〜」

「あ、俺は烏龍茶で…… 」

「はぁ?飲まないの?」

酒豪って言ってたのは、どこのどいつよ?

「あー、うん…… てか、ここにはよく来るの?」

「うん、地元だからね。お客さん探せばきっと知り合いが一人くらいはいるかもね〜」

高級料理……、とも一瞬頭を過ぎったが彼にも彼なりの理由がある訳だし。

「それに仕事帰りでしょ?ただでさえ疲れてるのに、かしこまった所なんて行ったらまた疲れるじゃない」

かっちりスーツとか着ていたのなら居酒屋臭が付くからって思ったけど…… 私服だったし。

色々と考えた結果、行きつけの居酒屋が抜擢された。

「ねぇ?今更だけど、何の仕事してんの?」

「あぁ。医療関係… の営業的な感じ、かな?」

「へぇ〜」

「鈴は?何の仕事?」

「へ?……あ、私?わたしも医療関係よ。歯医者の受付してる」

「受付嬢ってやつ?」

「想像している小綺麗な受付嬢ではないからね?」

「はっは〜、バレたか」

笑いながらもカウンターに出された焼鳥をよそってくれている彼はきっと私より女子っぽい。

てか、営業マンなら空いた時間に遅れる電話はできなかったのだろうか?

それこそ営業マンならそこは重要でしょ?
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