いつの間にか、溺愛。
〜♪
彼のポケットから携帯の着信音がしている。
その携帯を取り出し画面を見ている彼の顔は先程の笑顔はすっかり消えていた。
「ちょっとごめんね。___もしもし、……あぁ、そうだ。………わかった、今から行く」
ん?今から行く?
「鈴、……ごめん。今から仕事に行かないといけなくなった。本当にごめん」
「え?今から?………っ営業しに… 行く、の?」
「……うん。後輩が少しトラブっちゃって。 本当ごめん。この埋め合わせは必ずする。とりあえず一緒に出よう」
「私は… このまま残る。せっかくだから見て帰る」
「そっか。本当に申し訳ない。また連絡する」
そう言い残し、彼は隣の席から行ってしまった。
なんで?
どうして?
お医者さんなんでしょ?
なんで言ってくれないの?
彼の事がわからなくなった。この一瞬で。
1人残りそのまま上映された映画の内容は全く頭に入らなかった…