いつの間にか、溺愛。
付き合ってもない別れはいったいどれくらいしたら忘れられるのだろうか?

あの彼、奏くんとの思い出はそう多くはない。

が、なぜかふとした瞬間に思い出している自分。

彼と最後に話してから、もう1ヵ月が経とうとしていた。

唯一、話していた安子には話しておかないと、と思いつつ話せずにいた。

けじめを、と久しぶりに安子に連絡をしてお家にお邪魔することに。

「いらっしゃい。何もないけど、どうぞ」

「お邪魔しまーす」

新婚生活が感じられる初々しい部屋に案内された。

「まだ和也(かずや)は帰ってきてないから、適当に座ってて〜 コーヒーでいい?」

「うん。ありがとっ」

写真立てに飾られた結婚式の写真から、もうそんなにもの時間が経ったんだと。

「もう単刀直入に聞くけど… 戸高さんとはどうなってるの?」

「……何もなく終わったよ。彼女いたみたいだしね」

「はあ!?和也はフリーだって言ってたけど… 」

「美女と腕組んで歩いているの見ちゃったのよね。……これは私の憶測だけど、彼は医者だからどこかの令嬢とか?よくあるパターンじゃない?」

「本人に確認したの?」

「うん。なんか、別に付き合ってる訳じゃないからあんまり問い詰めるのも、ね」

「……帰ってきたら和也にみそくそ言ってやる!」

「あははっ… 旦那さんのせいじゃないわよ。それこそタイミングの問題よ」

「彼は医者だって、鈴に言ってくれたの?」

「それも私が問い詰めた結果、教えてくれた感じ。何なんだろうね?よくわからない、彼は」
< 40 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop