いつの間にか、溺愛。
蒼side
蒼side


鈴に会いたい。

なんて思うのは浅はかだろうか。

最後に会ったのは、もう1ヶ月前?

眠気覚ましのコーヒーを飲みながら、パソコン作業に追われていた。

病院の家柄に産まれてきた事を恨んだことはないが。

だが、今回は少しだけ…… なんて考えていると、

〜♪

手元の携帯が鳴り、呼び出し相手を見た。

「もしもし」

「お前、女できたのか?」

開口一番、それかよ?

電話の相手はこの前の結婚式の主役、和也だ。

「……っんなわけねーだろ」

「なら、なんで美女と歩いてんのを鈴ちゃんに見られてんの?」

はあ?美女?

てか、こいつ。なんで鈴のこと知ってんだ?

「順おって説明するが、あれは彼女じゃない。例のごとく…… お見合いだ。しかもそいつはお前も知っている、梨花(りか)だよ」

「え?梨花ちゃんって、幼馴染の?お兄さんの彼女じゃなかったの?」

「今それが、面倒い事になってんだよ」

「……そりゃ、まぁご苦労様です。でも、またなんで医者って隠しておいたの?まっ、どうせトラウマとか言うんだろうけど」

次から次へと。

こっちの気持ちを知らずに質問しやがって。

「あぁ、そうだよ。医者って言ってそれ目当てだったら、って思ったんだよ。それの何が悪い」

「はぁ…… お前はまたっ… そんな事、どうせすぐバレるだろ?しかも鈴ちゃんがそんな風にお前を見ると思うのか?」

「………いや。」

「だろ?鈴ちゃんの身にもなってみろよ。お前の正体もわからず健気に好きでいてくれてたんだから…… 」

「___っ、はあ?それ、マジなのか!?」

「とりあえず、お前にとっておきのもの送ってやるよ、じゃまたなっ」

そう言い残して、ブチッと切れた。

〜♪

和也からすぐさまメールがきて開いてみると、

「っ!?……マジかよ」

画面には、すやすや寝ている鈴の写真が貼り付けてあった。

あの野郎、ふざけやがって。

画面越しだが、久々に見た鈴は少し痩せた気がした。

ふわっとした寝顔にとてつもなく癒された。

どんだけなんだよ。



____俺、結構重傷だな。
< 43 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop