しょうがないから好きになってあげる!
「おい、要……」
俺に話しかけようと怖い顔で迫ってきた京太郎の前に風花が立ちはだかる。
俺のほうを見た風花は優しい顔で何か言いたげに言葉を選んでいるようだ。
なんだ?
「………要、るいちゃんになんて言ったの?」
「あぁ、常識身につけてから出直せよって…言った。」
「だめだよ!そんなこと言っちゃ。……いや、あの、要のは正論だよ?でもね、るいちゃんにも事情があったみたいなの。元はと言えば、私と京太郎が悪いの。」
「は?どういうことだよ?」
「俺らが、るいちゃんの事情も知らないで自分勝手に『友達になろう』なんて言ったから、るいちゃんを余計に混乱させちまったんだ。」
「は?どういうこと?其方になにがあったんだ?」
「るいちゃんは、お金持ちの社長令嬢なの。それで小学生のころから高校までエスカレーター式の女子校に通ってたみたいで、そこでは誰も文句を言ってこなかった環境らしいの。」
風花は丁寧に説明していく。
ほらみろ。
きっとこれで調子乗ってどこでもお嬢様気どりでなんでも許されると思ってる自己中女に成長したわけだな。
「るいちゃんは……それはみんなが自分と仲良くしたいって純粋に思ってくれてるからだと思ってたの。でも、真実は違っていて……みんなるいちゃんが“トップの社長令嬢だから”仲良くしていたみたいで……人が信じられなくなったみたいなの。それなのに、私たち……なにも知らないで……うぅ、ひっく…ごめんねるいちゃん…」
そんなことが………
反省してたけどアイツの顔はなにかとたたかっているような顔だった。
悪いことをしたのはわかっているけど、経験からそうなってしまったのは正直仕方ないと思って素直に反省しきれなかったのかもしれない。
それなのに俺は………なにも考えずにただの一般論を押し付けて。
其方……いや、るいには悪いことをした。
京太郎は風花を優しく抱きしめて「泣かないの」となだめている。
あぁ、俺は、本当に悪いことをした。
ダメな男だ。
俺はまた同じことを繰り返して、人を傷つけてしまった。
同じこと………繰り返して……………