しょうがないから好きになってあげる!


キーンコーンカーンコーン


「じゃあ、挨拶するわよ!次の時間に委員会と係を決めるからこの挨拶は次からは委員長さんがお願いね!はい!ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました」」」


ふぅ。
退屈なホームルームだったわ。
先生の長話じゃないの。

「其方さん!入学式の時に保護者さんにわたした資料、いつでもいいから今日中に職員室に取りに来てね!」

「……はい。」

ガマンするのよガマン!
こういうものなのよ。

っていうか、なんで私が取りに行くのよ!
こんなことなら入学式に出ればよかったわ。
はぁ、今すぐにでも取りに行こうかしら。

そう思った私はガタッと席を立って歩きだそうとしたがひとりの女の子によって行く手をはばまれた。

「そこ通りたいの。少し避けてもらえます?」

「あの……私……」

もう、なに?
職員室に行ってる時間がなくなるでしょう。
はやくどけなさいよ!

そう思って少しイライラしながら彼女を見る。

「…私と友達になってください!!!」

「は?」

モジモジとうつむいていた彼女はバッと顔を上げて勢いまかせで言ってきた。
『友達』?

「はぁ。」

バカバカしい。

「なってもらえるかな?」

そんなの、

「なるわけないじゃない。」


バカなの?
友達なんて必要ないのよ。
肩までの少し茶色い毛が混ざったふわふわのミディアムヘアに優しく垂れた目。身長は小さめね。
この子、きっと友達ができそうにないからひとりの私に声をかけてきたのね。
誰かと一緒じゃないと、行動ができない女子がよくすることね。
そんなことに利用されたくないわ。

「なんで?私もうすでに何かしたかなぁ?」

涙目になりながら聞いてくる彼女。
はぁ、めんどうね。

「名前はなんていうのよ?話しかけてくるなら名乗りなさい。」

「あ、ごめんね。私は伊藤 風花(いとう ふうか)!其方さんは、るいちゃん…だよね?」

「そうよ。」

さっきの瀬戸京太郎の大声で聞こえていたから知っているのかしら。
まぁ、なんでもいいわ。

こんなことをしている間に職員室に行く時間がなくなったじゃないの。
この子といるとぜんっぜん効率的じゃないわ。

不愉快ね。

「ねぇ、るいちゃんって呼んでいい?」

「嫌よ。其方って呼んでちょうだい。」

「やだやだ!るいちゃんと友達だもん!るいちゃんって呼ぶのー!!!」

かなり粘ってくる伊藤風花。
普通このくらい言ったら諦めるのに、この子はきっと相当の天然なのね。
ふふふ。
こんな天然記念物、他にいないわ。
珍しい子。
もしかしたら本当に友達になる気があるのかしら…?

だめだめだめ!
だめよ。
女はずる賢い最低な生き物よ。
ずっと女子校だったから男のことはわからないけれど、女は卑劣な生き物なのよ。
惑わされちゃだめ。

「るいちゃん?頭ブンブン振ってどうしたの?」

「な!なんでもないわよ。」

落ち着くのよ、るい。
冷静に冷静に………

「おっと!るいちゃんはっけーん♪」

別にここから動いてないからすぐに見つかるはずなのに、日本語がわかっていないのかしら?

瀬戸京太郎。




「なになに?お取り込み中?」

本当に空気が読めない男ね。
男もこんなクズばかりなのかしら?

「そうだよ!今ね、るいちゃんにお友達交渉してるところなの!」

「なにそれ。そんなことしてな「俺も混ざるー!!!るいちゃん、お友達になってください!!!」

このわたくしの言葉をさえぎって発言するなんて信じられない!

「嫌よ!あなたみたいな人なら尚さらね、瀬戸京太郎!」

「えー?そんなこと言うわりに俺のフルネーム覚えてくれてんじゃん♪嬉しいなぁ〜」

「ば、馬鹿にしないで!あーもう忘れたわ。今さっき忘れたわ。脳内から全て抹消されたわ。ついでにあなたも抹消されなさい、瀬戸京太郎……!」

「抹消されてないよー?」

ニヤニヤしながら馬鹿にしてくる瀬戸京太郎。
不愉快ですわ。

でも少し笑いたい自分がいる。
なぜ?
こんな低レベルな会話なのに、楽しいと少しでも思っているのは……なぜ?




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