10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
恥ずかしさで熱を帯びた体を冷まそうと、水をぐぐっと飲み干す。私の行動がわかりやすかったのか、春兄はそんな私を優しい目で見る。


なんか、自分の余裕のなさが出過ぎている気がする。春兄に似合う大人の女性になりたいんだけどな…無理するのも私らしくないのだけれど。



色々考えながらお店を出る。さすが冬といった具合の冷たい風が頬をかすめると、反射的にぶるっと震えた。


「寒いね春兄。昼間はそんなでもなかったよね?」


「明日は雪が降るらしいからな。降雪の前日は極寒だよ」


春兄も寒そうに両手を上着のポケットに入れる。すると、春兄は一度ポケットから右手を出して私の左手を掴む。


『何だろう』と春兄を見ていると、繋がれたその手はそのまま春兄のポケットに。


ドキドキするようなシチュエーションに胸が高鳴り、自分の吐く息がさらに白くなり空気と混ざる。


「これで寒くないだろ?」


「う…うん」


その状態のまま春兄の車まで歩いて行く。側から見たら完全に恋人同士だ。


河西くんとは友達の延長のようなところが少なからずあったから、もしかしたら春兄とも幼なじみの延長…という雰囲気が続いてしまったらどうしようと最初の頃は思っていた。


だけど、徐々に恋人らしさが出てきたことに喜びを感じる。


突然あれやこれやはできないけれど、私たちは私たちのペースでゆっくり進んでいこう。


運転席の春兄をチラッと見ながらそう思うのであった。






しばらく走った車は私の自宅の前で止まった。シートベルトを外し、いつものように降り際に声を掛ける。


「ありがとう春兄!おやすみなさい」


「おやすみ」


柔らかく微笑む春兄。春兄のこの笑顔を1日の最後に見ると安心して眠りにつくことができる。


満足した私は車から降り、走り出すその姿を見えなくなるまで見送った。



-----…


静かになった車内。ラジオをかけて音を流す。今週の音楽ランキングで、様々な曲のサビの部分のみが車内に響く。



「…春兄…か」


春兄が考えたようにそう呟いていたなんて、知る由もなかった。


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