10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
サンタさんがうちにやって来たのは、小学6年の時が最後だった。それまで純粋にサンタさんの存在を信じていた私。
『サンタさんと知り合いだから』というお父さんの言葉に、欲しいものを書いた手紙を渡した。
クリスマス当日、私の枕元には綺麗にラッピングされたプレゼント。毎年やって来るサンタさんに心の中でお礼を言う。
クリスマスから1週間経ったある日、お父さんの仕事用のカバンからちらりと紙が出ていた。見覚えのある紙だ。
それをゆっくりと取り出し、私はショックを受けた。だって、サンタさんに渡ったはずの手紙だったのだから。
泣きわめく私に困惑するお父さんの顔を今でも忘れない。それから我が家にはサンタさんは来なくなった。
彼氏もいなかった私にとって、クリスマスなんてただパーティするだけの行事に過ぎなかった。美味しいチキンと美味しいケーキ、それさえあれば十分。
だけど、今年は違う。今年のクリスマスは"特別な人"と過ごすのだから。
家の外に車が止まる音が聞こえた。
「春兄が来た!」
荷物を持ち、下に駆け下りて玄関のドアを開く。運転席から出て来た春兄は柔らかく笑った。
「藍ってば早過ぎ」
「春兄の車の音が聞こえたから!」
助手席に座り、春兄も運転席に戻る。どこへ行くのかわくわくする気持ちを春兄に向けた。
「ねぇ、今日は何するの?」
「ん?内緒。藍はエスコートされててよ」
そう言う春兄は何だか楽しそう。昨日の充希との会話の内容を頭の片隅に置きながらも、今は春兄との時間をめいいっぱい楽しむことにした。
雪は降っていないが、風が冷たい。17時を過ぎた頃と言っても、冬は日が落ちるのが早く、既に真っ暗だった。
車がしばらく走ると、色々なお店が立ち並ぶ大通り沿いに出た。店内のクリスマスらしい装飾が外からでも見える。ただの街灯も今日はイルミネーションのひとつのように目に映った。