10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
車はとあるパーキングエリアへと入っていった。どこかのショッピングモールの駐車場というわけではないのに、クリスマスだからか多くの車が停まっている。
春兄は空いているスペースにスムーズに車庫入れをした。毎回思うけれど、車庫入れする時の通常走行中よりも多く細かくハンドルを回す手が好きでいつもじっと見てしまう。
「ここから少し歩くんだ」
シートベルトを外しながらそう言う春兄。行き先は未だに告げられていない。
パーキングエリアを出て少し歩くと、目の前に海が広がった。水平線には明かりのついたビルがいくつも建っている。後ろには何十メートルにも続くイルミネーション。白、青、様々な色に光っている。
こんな素敵な光景…見たことない。
「春兄…凄く綺麗だね。ここに連れて来てくれる予定だったんだね!」
絶景に感動していると、春兄はショルダーバッグから何かを取り出した。
…封筒?
その中からチケットのようなものを抜き取り、それを私に見せる。
「景色だけじゃない。これに乗ろうと思って」
「東京湾クリスマスクルージング…」
嘘…こんなに素敵な物を用意してくれていたなんて。クルージングなんて乗ったことがない。大人の世界だと思っていた。
そう言えば、周りにカップルがやけに多い。みんなこのクルージングに乗るのだろうか。その中のひと組である私たち。改めて"恋人"なんだと思い知る。
「嬉しい。嬉しいよ春兄。ありがとう」
やって来たクルーズ船に乗る。やはりカップルか多い。大人の雰囲気を漂わせる内装、美男美女カップル、中年のご夫婦もいる。私なんて、まだ未成年だ。
うわ〜なんか、緊張してきた!!
「藍、そんなにガチガチになるなよ」
そんなに顔が強張っていたのか、笑いながら頭に手を乗せる。変わらない春兄のこれに少し安心した。