10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
すると突然カバンに忍ばせていた携帯が鳴る。こんなおしゃれなところにいるんだから、雰囲気を害さないようにマナーモードにしなくちゃと慌てて携帯を取り出す。


お母さんからメッセージ…?何だろう?



【今日は泊まりでしょ?♡】


「はぁ!?」


「藍?」


はっと口を手で押さえる。自分でもびっくりするほど大きな声が出てしまった。


と言うか、泊まりって…帰ってくるなって言われているようなものだ。


「藍、どうした?」


「ん?あ、いや!何でもない!!」


すぐにマナーモードに設定してカバンに突っ込んだ。あの陽気なおばさんは…全く。


「あ、あのさ、春兄」


「ん?」


でも…やっぱり、気になる。


「クルージングの後って、何かする?」


クルージングが始まったばかりなのにその後のことを聞くなんてどうかと思ったけれど、気になったまま過ごしたら雰囲気を楽しめない気がした。


充希もお母さんも、そんなことばっかり!!


「これの後?特に決めてはないけど…」


「そ、そっか」


「どこか行きたいとこあるなら連れて行くよ?」


案内されたテーブルの席に座る。ウェイターやウェイトレスも皆品がある人ばかり。春兄もその華やかさに負け劣らない。


クリスマスだからか、いつもより春兄の雰囲気に色っぽさを感じる。私が変に意識しすぎているせいかはわからない。


「行きたいとこ…私はこのクルージングだけで十分」


「そっか。じゃあこれが終わったら帰ろうか」


この言葉で泊まりはないと確信した。春兄とずっと一緒にいたいという気持ちももちろんあるけれど、心のどこかで少し安心した。


お母さん、ごめん。私、帰るね。
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