10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
【連絡取りたいって思ったから】


何の感情もこもっていなさそうな文面。これはどういう受け捉え方をすればいいのだろうか。


一応春兄とのことは気にしつつ、自分が連絡を取りたいと思ったからそれを優先した?


【うちで新商品が出たらお知らせしますね!】


返し方おかしいかな。いや、でも変に含みを持たせた言い方をする方が厄介なことになりそうだ。


【スルーすんのな。まぁいいや、また行くわ】


え、スルー!?やっぱりさっきの山下さんの"連絡取りたい"って言葉に何か深い意味があった!?


これって…山下さんのあれって…いや、まさかね。別にアプローチされているわけじゃないよね。春兄の彼女だから興味を持たれているだけだよね、ほら、知り合いの恋人って何かと気になるじゃん?きっとそれだよね!!うん!!


無理やり自分を納得させた。男性に連絡先を渡されたのなんて人生で初めてだから、どうしたらいいのかわからない。





その週の土曜日、週明けにいよいよ入社式を控えた春兄の一人暮らしの新居にお邪魔していた。


「結構綺麗に片付いたね〜!もうちゃんと住める!」


ふかふかのベッドにダイブする。今までの幼なじみの関係の時のようなノリで軽はずみなことをしてしまう。


いかんいかん、恋人同士でしかも彼氏の一人暮らしの部屋、そしてベッド…これはそういう展開になってしまうではないか、と慌ててベッドから飛び降りた。


「あははっ、そんな慌てなくても。まだ何もしないから大丈夫だよ。藍のペースに合わせるって言ったろ?」


「は…はい。恐れ多いです」


私の奇妙な行動の意味を完璧に察している春兄に余計自分が恥ずかしくなる。意識し過ぎなんだってば!!



冷蔵庫からお茶を持って来た春兄は私の向かいに座る。


「あのさ、山下さんってどんな人?」


「…え?山下って、木下の友達の山下?」


目も態度も冷たく言葉も交わさなかった人に突然連絡先を渡され、一応連絡はしてみたけれど山下さん自身がどういう人なのか気になった私はそう言った。
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