10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
4.捻れ始める関係
春兄が社会人になり初めての誕生日。しばらく県外で研修を行う春兄に電話でおめでとうを言ったのは、0時回ってすぐのこと。
「春兄、23歳のお誕生日おめでとう!研修どう?大変?」
『ありがとう藍。そりゃまぁな、でも毎日刺激になっているよ。そっちは?大学はどう?』
入学式や新入生ガイダンスを終え、つい最近本格的に講義が始まった。
1年の時が一番忙しいとよく聞くけれど本当にその通りで。毎日課題に追われている。でも友達も何人かできて、充実した生活を送っている。
「うん!今の所順調だよ!」
『そっか。藍の元気な声聞けてよかったよ』
そう言う春兄の声に温かさを感じ、頬が緩んだ。こんな間抜けな顔を見られたら絶対にからかわれる。電話でよかった。
『あとさ、山下はあれからどう?』
山下さんに連絡先を渡された日から私はしばらくバイトに行っていなかった。履修を組んでからまた出勤しようと思い、落ち着くまでシフトは入れないでもらっていた。
だから木下さんはもちろん山下さんとも会っていない。
「ううん、私バイトしばらく行っていなくて」
『そっか…藍、俺が前に言ったこと覚えてる?』
「隙を見せないように…?」
『そう。絶対に忘れないでね』
どうして春兄は私にそこまで山下さんを牽制するような言葉をさすのかわかっていなかった。
心配性だな〜と思いながらそれに答える。
「うん!任せといて!!」
『…本当に大丈夫かよ』
電話の向こうから聞こえる雑音にかき消され、春兄の言葉がしっかりと耳に届かなかった。
「何?聞こえなかった」
『あ、いいんだ。じゃあな』
電話を切った。明日は講義終わりにバイト先に待ってもらっていたシフトを書きに行く。
今まで休んでいた分、名一杯働くつもりだ。