10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
「竹内だって社内の女と食事に行くことくらいあるかもしれねぇぞ?」


「そ、そんなの会社の人付き合いじゃないですか。仕方のないことです」


駅のそばというだけに人が多いく、学校帰りの学生たちの好奇の目が気になる。


「竹内はそうだと思っていても、竹内に好意を持つ女だっているかもしれない」


「憶測じゃないですか!」


頑なに離そうとしない山下さんをキッと睨む。初めての経験で最初は戸惑ったけれど、ここまで自分本位にされるとさすがにイライラする。


「…そんな顔もするんだな」


「え?」


ようやく緩められた手に、今だ!!と思ってパッと腕を引いた。


「誰にでもヘラヘラしてるバカ女じゃなさそうだ」


「…なっ!!」


失礼な!!好きとか言うくせにこうして嫌味を言ってくる、意味がわからない。


「俺さ、木下に言われたんだ」


「木下さんに?何を?」


山下さんは私の問いに一拍置いてから口を開いた。


「お前には手を出すなって。竹内がずっと大切にして来た女だから絶対に手を出すな、そう言われた」


おちゃらけているイメージしかない木下さんからは考えられないセリフだった。その言葉に春兄との強い絆を感じると共に、春兄の私に対する強い思いも伝わって来た。


「…でも、俺は人のために自分の気持ち抑えられるほど優しいやつでもない」


山下さんの目がしっかりと私を捉え、縛りつけられるような感覚に陥った。


「だから俺は遠慮はしない。彼氏がいようが俺には関係ない。だから覚悟しとけ」


そう言って背中を向けて歩いて行った。ぽつんと佇む私の横を通り過ぎる人たちの動きがスローモーションに見える。


私と春兄の関係性を脅かす存在が突然現れたことに悲観した。
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