10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
『あー、確かにそういうところあるよな。店に予約の電話入れる時とか、掛ける前にシミュレーションとかしてるもんな』


恥ずかしいけれど、実はそうなのだ。もし予期せぬ返しが来たらどうしようとか余計なことばかり考えてしまい、電話を掛ける前に言葉の運び方を頭の中で練習する癖がある。


「そ、それを言わないで…」


子供みたいだと思われるのが恥ずかしい。春兄からしたら私なんてまだ未成年で、世間的にはまだ子供で…春兄は大人だ。


ただでさえその壁があるのに、これ以上子供みたいに思われたら、春兄の彼女失格だ。


彼女…彼女らしいこと、できるかな。



『…藍?聞こえてる?』


「え、あ!ごめんごめん!何?」


『来月クリスマスだろ?藍とどこか出かけたいなーって思って。空けられる?』


付き合ってからまともなデートをしていない私たち。思わぬお誘いに心が踊った。


「も!もちろん!!私のクリスマスは春兄のためにあるんだよ!!」


…って、何を言っているんだ!!まるで身も心もあなたのものと言っているようなものだ。


顔が熱を持っていくのが自分でもわかる。ここ数日で変態度がぐんと増したような気がする。


『…藍さ、無自覚なんだろうけどさ…まぁ、いいや』


「え、何?」


電話から聞こえる春兄の声が徐々に小さくなっていき、上手く聞き取ることができなかった。


『いや、何でもない。じゃあクリスマス当日にな』


「うん!春兄も卒論頑張ってね」



電話を切り、手帳に予定を書き込んだ。春兄とクリスマスデートか…何だか恋人らしい。


あと約1ヶ月、春兄に会える時間は少ないけれど、その分デートで会えた時の喜びに感謝しよう。


書き込まれた12月25日の欄を指でなぞり、顔が綻んだ。
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