10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
「木下さんが謝らないでください。全部私の不注意です。でも…これからどうしたらいいのかわかりません。春兄とは連絡も取れないし」


「あいつは…竹内は中途半端なままにしておく奴じゃないよ。藍ちゃんは竹内のことを待っていればいい。今は不安かもしれないけど、竹内のこと信じて待ってやっていてよ」


力強くそう言った。その言葉の裏に春兄に対する信頼が見えた。春兄の人望の厚さを改めて感じる。


「木下さん…」


「あいつがどれだけ藍ちゃんのことが好きだったのか、俺なんかでもわかってるつもりだよ。君のことでたくさん悩んでる竹内の姿も見てきたんだからさ」


私は大学での春兄を知らない。だけど、木下さんの言葉で私の知らないところで私のことをたくさん考えてくれていたことを知った。



「ちょっと鵜崎さん!レジ入ってって言ったでしょ!」


イートインスペースに顔を出す石田さんの声にビクッと肩が上がった。


レジに目をやると、別のお客様がトレーを持って待っていた。



「す、すみません!すぐ行きます!ごめんなさい木下さん、私戻りますね!お話ありがとうございました!」


勢いよく頭を下げてレジに戻った。


「た、大変お待たせ致しました!」


待ちくたびれたように少しイライラした様子を見せる主婦のお客様に心の中で何度も謝罪しながらレジ打ちした。



ずっとモヤモヤしていた気持ちが木下さんのお陰で穏やかになった気がする。


山下さんが強引に迫ってきたせいだと言っても、私にも非があった。そしてその後の選択を誤った。


最初から全てを話していればよかったのかもしれない。


春兄に迷惑をかけたくないと思いながら、結局一人で解決する力なんてなかった。



"大人の女性"なんてまだまだ程遠いな…


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