10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
木下さんに言われた通り、焦らず春兄からの連絡を待つことにした。
家まで押しかけてしまえば話は早いのだが、そこまで強引に迫るのは私の目指している"大人の女性"像には程遠くて。
春兄を信じて待つことが今の私にできる精一杯。自分の非を認め、猛省してまた春兄に信頼されるようにしないと。
そう決めて1週間ほどたった時だった。相変わらず大学の講義とバイトに明け暮れている毎日を過ごしていた私の携帯に一本の連絡が入った。
メッセージアプリを起動し、その送り主の名前を目にした瞬間胸がドキドキと激しく打ち付ける。
「春兄…」
それは願っても無い春兄からのメッセージだった。
高鳴る胸を落ち着かせるように大きく深呼吸してメッセージを開く。
【藍、久しぶり
話したいことあるんだけど、時間ある?】
しかし、単調なその文に少し違和感を覚えた。
話したいこと…?わざわざ会って話したいことって何?
まさか、別れ話なんかじゃないよね。きっと、山下さんのことで落ち着いてきちんと話がしたいってだけだよね。
うん、きっとそうだ。
【久しぶり!うん、今夜とか大丈夫だけど】
返事はすぐに返ってきた。
【よかった。じゃあ駅前のファミレスで】
メッセージのやりとりが終わっても、私はしばらく携帯を握りしめていた。春兄は普段から絵文字とか顔文字とか多く使う方ではないけれど、内容が内容だけに不安になる。
春兄がどれだけ私を好きでいてくれていたかなんて、私自身が一番よくわかっている。だから、簡単に別れ話をするようには到底思えない。
「春兄…大丈夫だよね」
無意識に言葉が口から漏れていた。急に襲いかかる不安に押しつぶされそうになる。
大丈夫、私たちは大丈夫だ。