10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
待ち合わせの時間がやって来るまでがとても長く感じた。


私の足は駅前のファミレスへと進んでいる。


春兄はもういるのかな?久しぶりに顔を合わせること、最後に会った時の状況を考えるといつも春兄に会う時に感じるドキドキはなくて、どちらかというと恐怖に近い。


ファミレスに近づいて来ると、カバンの中でメッセージの通知音が鳴った。



【席取ってるから。窓際の一番奥ね】


その言葉通り、私は入店してその場所に向かう。


丁度夕飯時ということもあってか、昼ほどまでとはいかないがそれなりに繁盛しているようだ。


ガヤガヤと騒がしい店内、今の私にはその雑音さえ気にならないほど心臓が大きく動いている。



そして見えてきた春兄の姿。しかし、そこに居たのは春兄だけではなくて。



「…あ…れ?」


ソファ席に並んで座っている春兄の隣には…


「久しぶりだな」


山下さんが居た。


嫌でもあの時のことが頭の中を駆け巡り、ゾワっと鳥肌がたった。


「藍、座って」


久しぶりに見た春兄の顔には笑みがなく、不安な気持ちが顔に出てしまう。促されるままに私は向かい側に腰を下ろした。




この場には合わないような緊張感が漂う。


「藍、だいたいのことは山下から聞いたよ。あの時俺もカッとなって、余裕がなかったんだ。本当にごめん」


最初に口を開いたのは春兄だった。まさか謝罪の言葉が出るなんて思ってもいなかったから、頭を下げる春兄に咄嗟に立ち上がって言った。


「ち、違うよ!謝るのは私の方だから!春兄が悪いなんてこと100%ないから!」


春兄に迫られ、山下さんにされた事がフラッシュバックして春兄を拒絶してしまった。


どれだけ傷つけてしまったか計り知れない。そういう状況にさせてしまったのも全て私の責任だ。


「だから、その…春兄が嫌だったわけじゃないから。本当に。これだけは断言できるから」


気になるのは山下さんの存在だ。どうしてこの場に連れてきたのだろう。


気になって目をやろうとするが、痛いほど感じる視線にそちらの方を向く事ができない。



黙って再び座ると、私の気持ちを察したかのように口を開いた。


「二人を会わせたのは、理由がある。山下、藍に謝ってくれないか」


え…?


もしかして、木下さんが言っていたことって。



「…あぁ」


春兄を信じて待っていろ、中途半端なままにする人じゃないって、こういうこと?

< 45 / 83 >

この作品をシェア

pagetop