10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
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学校からの帰り道。最寄りの駅を出て歩道を歩いていると、スーパーから出て来たある人物に声を掛けられた。
「あら藍ちゃん、お帰りなさい」
「あれ?春兄ママ」
両手に大きな買い物袋を提げた春兄ママ。『ひとつ持つよ』と片方の袋を取り上げようとするが、それを制された。
「いいのよ〜?息子の彼女に重たい物なんて持たせられません!」
その言葉に改めて"彼女"という立場であることを実感する。慣れない立場だ。
「そんな〜、別に妊婦じゃあるまいし!」
強制的に買い物袋を奪い、再び歩こうとしたその時だった。
「…藍?」
声のする方を振り向く。同時に春兄ママも振り向いた。
「春兄!」
こうして顔を合わせるのは久々だ。私と目が合い微笑む春兄に安心感を覚える。
「お帰り春人」
「荷物持つよ」
春兄は春兄ママの手からもう一つの買い物袋をスマートに取った。そして当たり前のように私の手からも。
その自然な流れに胸がくすぐったくなった。かっこよくて、優しくて、紳士的な対応もできる春兄に欠点が見当たらない。
軽々と荷物を持つその姿に見惚れていると、春兄ママは大げさに顔を緩ませた。
「ちゃんと気配りができて、赤ちゃんができても安心ね、藍ちゃん?」
「ん!?え!?」
先を歩き出そうとしていた春兄も立ち止まり、振り返った。
「早く二人の子供の顔が見てみたいわ〜。子育て手伝うからね?藍ちゃん」
「ちょっ、ちょっと!!」
春兄の前で子供ができる行為を示唆する発言は…!!
春兄はというと、顔色ひとつ変えずにいる。ノーリアクションもどうかと!!