中学生の私と女の子。

本棚

私には、2歳年下の妹と10歳年下の弟がいる。

両親の読書好きが遺伝してか、みんな本が好きだった。



家族団らんの小さな部屋には、大きな木製の本棚が置かれていた。
木目が美しい、赤褐色の本棚には、子ども向けの絵本から海外の推理小説まで、様々な本が並んでいた。



私はこの部屋で、絨毯に寝そべって本を読むのが好きだった。
(母には『お行儀が悪い!』とよく注意されたが…)


4才になった弟も、お気に入りの絵本は1人でよく読んでいた。





あの夜も、

いつものように本棚の横に布団を敷き、眠りについていた。






どれくらい眠っただろう。




突然、目が覚めた。


と言うよりも、

勝手に目が見開いた。




瞼が動かせず、目が閉じられない。
身体も動かせない。




暗闇の中、

天井に吊るされたシャンデリアを、
ただ見つめることしかできなかった。




ペラ…ペラ…


本をめくる音がした。


ペラ…ペラ…ペラ…ペラ…


誰かが本を読んでいる。
弟が目を覚ましたのだろうか?


本をめくる音は、頭の真上辺りから聞こえてくる。
本棚の前で、絨毯に座って読んでいるのだろう。

身体が動かないので、誰だか確認できない。
声を掛けようと思ったが、声も出ない。



こんな暗闇で本を読もうとするのは幼い弟だろう。
きっと少し経てば寝に戻るはず。

そう思いながら、私はただその音を聞いていた。



ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…





……いつまでめくるのだろう?

かなり分厚い本でなければ、こんな長時間、ページをめくり続けることなんてできないだろう。
しかしこの本棚にそんな本なんて、、ない。




私は、ふと気付いた。




この部屋の扉は全て閉まっている。



音も立てずに、どうやって入ってきたの?





……背筋に冷たいものが走る。

と同時に、頭の上にいる存在を強く意識した。



怖い…





ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…



私は目を閉じたかった。
目を閉じて、布団に潜ってしまいたかった。


……しかし、瞼は命令を聞かない。




“ナニ”かが、

私の頭の上にいる。




“ソレ”が少しでも動いたら、

きっと私の視界に入る。




私は“ソレ”を見たくない…

見たくない…






ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…

ペラ…ペラ…ペラ…ペラ…




本はめくり続けられる。

規則的に、同じ速さで、ずっと、ずっと、ずっと……



怖い!!

怖い!!!

早く、早く終わって……!!!!!


















気がつくと、朝だった。



赤褐色の本棚には、いつも通り本が並んでいた。


夢?



いや、夢じゃない。



私の耳の奥には、


ペラ…ペラ…ペラ……


本をめくる音がこびりついていた。
































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