片翼の運命

顔が紅いままで、それを見られたくなくて、腕を引いた。でも、その拘束は容易には解けなかった。

「避けても良い」

彼の瞳に捉えられる。

「だから、今答えて欲しい」

逃げられないと思った。
この美しい瞳から、わたしは逃げられない。

「……い、いいよ」

だから、逃げ腰で答えた。

その瞬間、彼の翼が開いた。尤もそれは左右があったら正しい言葉だったかもしれない。

彼の場合は片方だけが広がった。

こんなに広がっているのを見るのは初めてだ。羽毛はなくて、日光が透き通って血管がわかる。立派な翼だ。



< 62 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop