片翼の運命

それに見惚れていて、彼の表情は全く気にしていなかった。

「本当に?」

腕から変わって両手を掴まれる。嬉しそうに輝いているその顔を見て、苦笑いを返す。

「うん」

「そういえば美衣ちゃん、これ見えてるよね?」

久しぶりに名前を呼ばれてどきりとする。
これ、と示されたのは翼。

正直に答えるべきか迷って、結局頷いた。どちらを言ったからといって、わたしに何のメリットもない。

「誰かに言った?」

ばさ、と大きく動く翼。それから小さく畳まれた。

首を振る。誰かに言えるほど、わたしは自分に自信はない。

「なんで?」



< 63 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop