大切なもの【完結】

「おまえ、そんなに俺が好きだったんだな…」



今まで彩香しか見てこなかったから
本当に気づいてなかった。

みんなそれぞれに好きな人がいて
その想いが絡まりすぎて…─


みんなが幸せになる方法なんてないのだから。
彩香を安心させる方法は新しい恋をすることなのだろうと
目の前にいる桜苗が俺のことを好きと言ってくれているのに
彩香を中心に考える俺はなんて酷いんだろうか。



「いまさらやめれって言われても無理だからね」


「やめれなんて言わねぇよ」



俺のことを好きだって言ってくれるのは嬉しい。
それに俺の気持ちがまだ着いてってないだけ。


「このまま好きでいていいんだよね？」


「ダメだったらお祭りなんて誘わねぇよ？」


「ふふ。嬉しい」



桜苗といる未来を脳裏に描く。
たぶん、悪くないんじゃないかと思う。

俺の方が思われるってのも悪くないよな。



愛されるより、愛したい
だけど、愛されたい…─