大切なもの【完結】
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「ん?」



桜苗との待ち合わせ場所で待ってるとズボンのポケットでスマホが震えてる。



「郁人?」



画面を見ると郁人からの電話。



「もしもし?」


『何してんの?』



冷静そうに見せて焦りを含むような郁人の声色。
郁人のことならすぐにわかる。
だから彩香のことを好きだってこともすぐにわかった。
両思いなのに、俺は郁人を牽制した。
ふたりの気持ちを俺はわかっていたのに…─



「何って、これからお祭りだけど?」


『誰と?』


「それ聞いてどーすんだよ」



別に言ってもよかったんだ。
桜苗と一緒だって。
でも、それが彩香に伝わるのが嫌だと思ってしまう俺はほんとに未練たらしい。

まぁ、昨日の今日で忘れろったって無理に決まってる。


どんだけの間、彩香のこと好きだったと思ってんだ。

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