大切なもの【完結】
「お前、中学同じじゃん?」

「うん」

「いろいろ教えて欲しくて」

「いや、俺も何も知らないよ」


俺は〝ははっ〟と笑う


ほんとに何も知らないんだ。
中学の頃なんて話したのはあの1度だけ。
すれ違う度にみてただけだった。


「でもさぁ、この中で例えば俺が告ってうまくいってもみんなと変わらないことなんてできんのかね」


翔が辛そうに笑う。


「まぁ、もし翔のこと好きなやつがあの中にいたらな。そりゃ壊れるだろうな。彩香のこと恨むだろうし」

「...だよな。まぁ、俺のこと好きなやついないし。そこは大丈夫か」


翔が今度はにこって笑う。

百面相だ。こいつ。

てか、ほんとにわかってないんだな。
誰から見ても、桜苗が翔のことを好きなのは一目瞭然なのに。

< 11 / 209 >

この作品をシェア

pagetop