大切なもの【完結】
「そろそろ花火じゃない?」


「だな。あっち行くか」



俺は少し小高いところにある丘を指す。



「あ、なんか良さげ」


「だろ?あそこから見るのなかなか穴場だって噂」


「穴場なのに噂なの?」



桜苗がくすっと笑うのは可愛いなと思う。



「行こう」



俺の言葉に桜苗が俺の横を歩く。
俺も桜苗の歩幅に合わせて歩く。



「桜苗ちっちぇーよなー」


「なにそれ、失礼ー」



やはり小さい桜苗は俺のことを見上げる。



「見上げてんじゃん」


「翔が高すぎるんでしょー」



平均より少し低い桜苗と少し高い俺。
見下ろしたところに桜苗の頭があって。
こんなふうな光景になるんだなって初めて知る。


彩香はまぁ女子の中では高いほうだから。
桜苗とはまた違う光景だった。
そのおかげで俺は並ぶ時に彩香の隣になってそれで彩香のことを好きになったわけで。

てか、なんでまた彩香のこと考えてるんだろ。

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