大切なもの【完結】
「なんとなく彩香なんだろうなーって思ってたから大丈夫だよ。ほらここで見よう」


桜苗が石段に座る。



「桜苗は俺よりも俺のことわかってんな」


「でも、ごめんね」


「え?」



突然謝られて首をかしげる。



「2回も彩香たちみちゃったじゃん」


「それは別に桜苗のせいじゃないだろ?」



あれは不可抗力であって。
誰1人として悪いやつなんかいない。
強いていえば、俺がきれいさっぱり忘れればいいだけの話だ。



「あたしとお祭りに来なければ見なくて済んだじゃん」


「いや、誘ったの俺だよ」


「あたしの気持ち知ったから、でしょ?」


「まぁ…」



あの時、桜苗の気持ちをまだ知らなかったら、確かに今日は家で寝てたかもしれない。
でも、別にそれで桜苗のこと責めようとも思わないし。
桜苗を誘ったことに後悔もしていない。
桜苗がいなかったらもっと落ち込んでいただろうとさえ思うから。

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