大切なもの【完結】
「あたしが好きになってなければ今日ここにもきていないし、翔のことこんな気持ちにさせてない」



そう苦しそうな顔を見せる桜苗こっちも苦しくなる。



「バカだろ」


「え?」


「お前どんだけ俺のこと好きなのよ」



桜苗は一瞬顔を赤くしたあと



「大好きだよ」



と恥ずかしそうに言った。



「なんでここで照れるんだよ」



こっちまで照れるだろ。
自分の顔が赤くなっているだろうことは容易に想像がつく。



「翔に付き合っていけるの、あたししかいないよ」



なんて俺の手をとる桜苗。



「…思われてるのも悪くないよな」



お祭りに誘った時にも思ったこの気持ち。
正直桜苗の想いに救われている部分がある。
桜苗に思われてるんだってものがあるし、いまこうして桜苗が隣にいて俺の手を握ってくれているから。

俺は彩香と郁人のことをそんなに気にしなくなっているのかもしれない。
彩香のことはまだ好きだし、忘れられる自信だってまだないんだ。


でも、賭けてみてもいいかもしれない…─


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