大切なもの【完結】
「桜苗、俺と付き合う?」


「え?」



俺の言葉に唖然とした顔で俺の顔を見上げる。



「正直、俺はまだ彩香が好きだ」


「知ってる」


「昨日あの2人が付き合うことになって覚悟はしてたけど、やっぱりショックでさ。でも桜苗が好きでいてくれて俺の隣にいてくれるってことでだいぶ救われてる」



正直な俺の思いを桜苗に伝えると桜苗はまっすぐに真剣に俺を見てくれた。



「…翔の役に立ててるならそれだけで嬉しい」



そう微笑む桜苗に俺ははじめてきゅうっと胸の奥がなるのを感じる。



「彼女が欲しいからとかじゃないのはわかってほしいんだけど」


「うん」


「誰でもいいわけじゃなくて、桜苗がいいんだ」



こうして隣にいてくれる桜苗と一緒に未来を描きたいなって思ったら、本当にできる気がしたんだ。



「ほ、んとに?」



震えた声で発する桜苗の目には涙が浮かんでいる。



「泣くなよ」



桜苗の頬に手を触れる。

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