大切なもの【完結】
「休ませてー」


「え?坂野くん?」



保健室の先生の返事も聞かずにベッドに寝転んでカーテンを閉める。



「まったく、高校生になってからサボらなくなって安心してたのに」


「うるさい。寝かせて」



この保健室の先生。
去年まで俺の中学にいて今年からこの高校にきたんだ。
だから去年も俺の通っていたところの先生だったってわけ。



「はやく帰るのよー」



それ以上のことは言うつもりはないらしく、カーテンの閉まった隣から去っていく足音が聞こえる。



中学まで俺はほんとにクラスが嫌いで。
友達なんてそんなもの必要がなくて。
でも、学校には行かなくちゃならなくて。
授業に出るのが嫌になったときにこうして保健室で寝てたんだよな。


高校に入学したときも友達なんか作るつもりなかった。
学校でなんて作るつもりもなかったんだ。

でも、翔が声をかけてきて。
人に心を開かない俺の扉をこじ開けてきやがって。


あいつのおかげで俺は本来のこの姿を取り戻せたと思っている。

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