大切なもの【完結】
「わかんねーじゃん。んなの。それに彩香のこと好きなやつだっているかもしれないし」


俺のことだけど。


「郁人は?」


翔が俺の顔をのぞき込む。


「俺?」

「同じ中学だったけど彩香のこと好きだったり...」


翔が不安気な顔になる。


「なんちゅー顔してんだよ」


俺は翔の頭をぽんってたたく。


「郁人がライバルなら敵わない気がして」

「なんでだよ」


俺は翔がライバルなのが怖いよ。


「郁人のこと絶対彩香好きになる」

「んなことねぇよ」


ほんとにそんなんなったら嬉しいけどな。


「郁人にだけなんか違う気がすんだよ。彩香」

「そうか?変わらんだろ」

「なんか、どこか緊張してるっていうか...」


翔の言葉にちくんっと胸が痛む。

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