大切なもの【完結】
「もう、寝よう」



俺は布団に潜る。


でも、浮かんでくるのは桜苗の顔。
俺、どんだけ桜苗が好きなんだよ。
なんで、桜苗は俺じゃダメなんだよ。

そういえば桜苗と翔は中学のとき塾が一緒だったんだっけ。
そこから桜苗はずっと好きなんだろうな。
俺なんてもっと前からなのに、記憶にすら残ってないもんな。



「はぁ。なんで翔なんだよ…」



相手が翔じゃなかったらよかった。
そしたら仲良くしてる姿を目の当たりにすることもないし。
いや、俺が声掛けられなかったらよかったのか。
そしたらずっと見てるだけで済んだのに。
仲良くなったら欲張りになった。



でも…



「みんなに出会わないなんてな…」



そんなのは嫌だ。
俺、こんなにも自分に大事な友達ができるなんて思っていなかった。



俺をこんな俺にさせたのは間違いなく翔で。
翔が桜苗と付き合ったからって翔のことを嫌いになれるわけなんてなかった。

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