大切なもの【完結】
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「翼?」


「桜苗」



屋上で俺の背中に声をかけてくれた桜苗に笑顔で振り向く。



〝屋上に来て欲しい〟



それだけのLINEを送った俺に、ちゃんと来てくれた桜苗に嬉しく思う。



「どうしたの?」


「俺、桜苗が好きだよ」



俺の言葉に苦しそうな顔を見せる桜苗。
こういう風に俺を頭に入れてくれるだけで満足なんだ。



「あたしは…」


「わかってる」


「…翼」



わかってるからこその今日なんだ。



「だから、ちゃんと振ってほしい」


「え?」


「けじめつけたいんだ。そうしないと俺、お前らと一緒になんていられないんだ」



けじめつけないと。
前に進めない。
俺だけがとまってしまうんだ。



「…でも」


「いいから。俺のこと見てくれるんだったら振らなくていいけど」



そんなことはあるはずがないんだけどな。
わかってる。

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