大切なもの【完結】
「緊張ってそれ全然俺に心開いてないじゃん」


俺は自嘲気味に笑う。


俺にだけ違う。
それは俺がわかってたことだよ。
だから、翔がライバルだと怖いんだ。


「心開いてない、とかじゃなくて好きだからなのかなぁーって」

「...んなことねぇよ」


いつだって彩香は翔を頼ってた。
そんなの見慣れたんだ。

だから、翔と彩香がくっつくのなんて。
容易に予想できた。


「大丈夫うまくいくよ」

俺はそう言ってジュースを飲む。


「郁人はすきじゃないんだな?」

「俺言ったじゃん。中学の頃話したことなかったって。別にただ同じ中学だっただけだから」


俺はこうして嘘をつくんだ。


「じゃあ俺頑張る」

「応援する」


自分を傷つける言葉もいくらでも言う。

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