大切なもの【完結】
「あたしだってあの頃は翼のこといいなって思ったもん忘れるわけないでしょ?」


「は?」



桜苗の言う言葉の意味がわからなくて、桜苗をじーっと見つめてしまう。



「小学生の時だよね?あたし達が初めて会ったのって」


「え、それ覚えてたの?」



やばい。
言いようもないぐらいの嬉しさがこみ上げる。



「だって結構仲良くしなかった?」


「うん。でも俺だけだと思ってた」


「なんで?あたしの初恋なんだよ。翼は」



〝初恋〟
その言葉に胸が踊る。



「なんで、いまは翔なんだよー」



ぷぅっと頬を膨らませて見せる。



「うーん。なんでだろう?気づいたら翼は友達になっちゃってて、翔のことを好きになってた」


「そっかぁー。くそー!タイミング悪ぃ」



てことは、両思いだったんだよな。
それだけで充分だった。
恋が成就したような気持ちにさえなれる。


「ありがとう。それだけでもう充分だ」



解放してあげる。
俺の心を……──

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