大切なもの【完結】
「彩香は、いないか」



翔と翼と別れて悠貴の家の前にたどり着く。
悠貴の家の向かいを見れば大好きな彩香の家。

出てこないかなと見てみるのにドアがあく様子はなくて。
付き合う前に悠貴の家にくるたびに同じようにドアを見てたっけって思い出す。



「なんも変わってねぇじゃん」



彩香と付き合ってるはずなのに。
こうしてドアを見てる行動はあの頃のままで。
彩香のことを信じてるはずなのになんだか言いようのない不安が俺を襲う。

いつになったら彩香の彼氏って自信もてるのかな。
今のおれじゃあ自信がなさすぎる。

わかってるはずなのに。
ちゃんと俺のことが好きだって。



「郁人、チャイムも鳴らさないでなにしてんの?」



窓から見えたのだろう、俺がいることに気づいた悠貴が家から出てきた。



「彩香の家見てた」


「なんだそれ。毎日会ってるくせにそんなとこで見ててどーすんだよ」



悠貴が可笑しそうに笑う。

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