大切なもの【完結】
「で?何か不満でもあんの?彩香に」


「不満なんか…」



ずっと好きだったやつと付き合えて、彩香はやっぱり彩香で。
不満なんかひとつもない。



「じゃあなんでそんなになんか元気ないんだよ」


「最近放課後会えてないからさ」


「なんかしてるの?彩香」



悠貴にも教えてないって言うことを知る。
少し嬉しく思うなんて俺はどうなんだろう。



「みんなは俺の誕生日が近いからバイトでもしてるんじゃないかって」


「その言い方は誰も知らないってことか」


「うん。悠貴なら知ってると思ってた」



知ってたら知ってたで嫌なんだけど。



「いまは俺より郁人のほうが知ってるだろ」


「そうかのかなぁ。なんか俺が一番知らないんじゃないかとか思っちゃうんだよね」



悠貴のベッドに寝っ転がって顔を覆う。
こんなことを言う自分が嫌だし、悠貴にこんなこと言うつもりなかったのに。


彩香のことになると自分が抑えられない。

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