大切なもの【完結】
「ちょっと待ってろ」



悠貴が立ち上がって部屋から出ていく。



「なんだよ急に」



悠貴がいなくなった静かな部屋でどうすることもなくただ寝転んで天井を見る。
浮かんでくるのはやっぱり彩香のことで。


ふと思い出して悠貴の部屋の本棚に目をやる。



「…あった」



起き上がり、本棚から中学の卒業アルバムを手に取る。



「懐かし…」



彩香のクラスを開くと今よりも少し幼い彩香が笑顔で映っている。
まだ全然話たことのなかった彩香。
いまこうして付き合っているなんてこの頃の俺に言っても信じてくれないよな。



「郁人!」



俺を呼ぶ声と同時にバンッとドアを開ける音がする。



「そんな慌ててどーしたんだよ」


「おばさんに聞いてきた!」


「おばさん?」



どこのおばさんだろうと本気で思う。



「彩香の!」


「あ、彩香!?」


「おう!やっぱバイトしてた!バイト先は…」



ポケットから紙を取り出す。



「ここ!」


「ふーん。結構近めなんだな」



悠貴が見せてくれた紙に書かれた住所は
俺と彩香の家の真ん中ぐらいにあるパン屋だった。

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