大切なもの【完結】
「郁人がそんな事言うとはねー」


「俺だって自分でびっくりしたんだよ」



いままで彼女だっていたことなかった。
想像してた彼氏の自分はもう少し冷静なはずだった。
だけど、実際彼氏になってみたらもっともっとって欲が出てしまう。



「あれ、郁人…あいつ」



悠貴が俺の制服を引っ張る。



「なんだよ…え?」



悠貴に言われてみたパン屋には、彩香の隣に男の子が立っていた。



「…四宮(シノミヤ)だよな?」


「あぁ」



四宮と彩香は中学の時に同じクラスだった。



「あ、ここ四宮の実家…?」



悠貴がパン屋の看板を指さす。

〝BAKERY SHINO〟って書いてる。



「多分そうだな」


「四宮ってたしか…」



悠貴が途中まで言って言いよどむ。



「わかってる。彩香のこと好きだったよな」



中学の頃から有名だった。
四宮が彩香のことを好きなのは。

< 145 / 209 >

この作品をシェア

pagetop