大切なもの【完結】
「彩香、自分のこと好きなこと知らないの?」



香が首を傾げる。



「え?」


「知らないから働いてるんでしょ?彩香鈍感そうだし」


「卒業式であいつ告ってるよ」



たしかにその時は断ったはずだった。
本当に隣にいるのがほかの人だったらよかったんだ。
なんで四宮なのかってずっとおもってる。



「え!?じゃあ好きなことを知ってるのに一緒にいるってなと?」



香が俺の肩を掴む。



「さぁ、そうなんじゃね?」


「違うだろ。おおかたもう好きじゃないから友達でとか言われてんだろ」



翔がまた彩香のことをわかったようにいう。
そんなことにまでイライラしてしまう俺に彼氏なんか務まるんだろうか。



「…そうかもな」



大きくため息をつけば



「浮気されたわけじゃないんだからさー、そんな落ち込むなって」



翔が俺の頭ボーンッとカバンで叩く。



「いって」


「ほら、ファミレスでもいくぞ」



俺の腕を掴んで歩き出す。

元気づけてくれてるのはわかってるけど、激しすぎだろ。

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