大切なもの【完結】
「彩香、いまパン屋行くみたいだよ?」


「え?」


「制服返しに…ってこれ言っちゃいけないのか!」



慌てて自分の口を抑える。



「ははっ大丈夫。彩香隠せてないから」


「やっぱりねー!絶対彩香に隠し事なんて無理だと思った!」


「まぁ、俺は騙されてあげるけどね」


「ひゃーあつーい!じゃあね!」



大して熱くもないのに手で顔周辺を仰いでからチャリを再び漕ぎだした。
あの子は香タイプだよな。
いつも明るいようにみえた。

彩香の隣にいたから良く見えたんだよな。
俺はいつも目の合うこともない彩香のことを見てたから。



「パン屋かぁ」



もうバイトしてるわけじゃないし、偶然装っていこうかとおもう。
約束はしてなくても会えるってなんかいいし。
佐倉のおかげなんだけどな。



「行ってみるか」



もう返し終わったあとかもしれないけど。
暇だし、散歩ついでに行ってみよう。
何よりも彩香にあいたい。

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