大切なもの【完結】
「四宮くんいつも美味しいって言ってくれたから、マドレーヌ好きなんだなって思って」


「特別マドレーヌがってわけじゃねぇよ?彩香が作るやつならなんでもいんだよ」


「…四宮くん」



突然四宮が彩香の腕を掴んで裏へと歩き出す。



「…は?」



俺はそーっと気づかれないようにあとをつける。

俺、探偵に向いてるかも。
とかそんなこと考えてる場合じゃないし。



「四宮くん?」


「彩香のこと俺まだ好きだ」


「…え?」



彩香がバッと顔をあげる。



「卒業式に振られてもう好きじゃないから友達に戻ろうなんて言ったけど、ほんとはずっと気持ちなんて変わってなかった。友達ですらいられなくなるのが嫌で言うつもりなんてなかったのに」



じゃあそのまま言わないでいてくれよ。
と思ってしまう俺は心が狭いのだろうか。

でも、友達ですらいられなくなるのが嫌という気持ちはよくわかる。
付き合う前に俺がずっと思ってたことだから。

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