大切なもの【完結】

牽制一Ikuto

「いーくと!」


俺の肩に重さがかかる。


「重いよ。香」

「いいじゃんいいじゃん」


なんてのんきに返事をする。


「朝からほんと毎日元気だな」


俺はふっと笑う。


「郁人に会えるからだよ」


なんてにこにこして言うなよ。

どうしていいかわからなくなる。

俺はお前をなんとも思っていないのに。
告白とかもされたくないのに。
振るのが嫌なんだ。
振ることすらできない臆病なんだよな。


「お前、そーいうことあんまいうな」


俺は香の荷物を渡す。


「なんでー?別に彼女いるわけじゃないしいいじゃん!」


香がふくれっ面になる。


「彼女いるとかいないとかの問題じゃねぇよ」


あまり彩香に見られたくないし。

と、あたりをキョロキョロしてしまう。

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