大切なもの【完結】
「郁人!?」



彩香は見たこともないぐらい驚き顔。



「彩香の彼氏って…大嶋?」



四宮は四宮で落胆したような顔だ。



「え、郁人なんで?」



四宮の存在がなくなったかのように彩香は俺に疑問をぶつけてくる。
四宮の言葉なんて聞こえていないようで少し四宮が気の毒になった。



「俺と彩香、付き合ってる」



彩香の肩を抱き寄せ四宮に言う。



「そりゃ勝てねーわ」


「え?」


「中学の頃から彩香が大嶋のことを好きだったのは知ってるからさ」



今度は納得したような顔で言う。



「ごめんね。四宮くん」


「好きなやつと付き合えたならよかったじゃん」



四宮がにこっと笑う。



「彩香、行こうか」



俺は彩香の手をぎゅっと握る。
彩香とふたりきりになるってことが最近なかったから。
久しぶりに彩香の手を握った。



「バイバイ、四宮くん」


「おう」



四宮に手を振り2人で歩き出す。

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