大切なもの【完結】
「うん。大丈夫」



怖いわけじゃないし、嫌なわけじゃない。
郁人ならって思いもある。
好きな人だもん、そういうことをしたいって気持ちもあるよ。



「うん。サラサラ」



髪の毛に触れるといつもよりサラサラに感じた。
たまにしか使わない特別なトリートメントを使ったんだ。
お姉ちゃんのだけどね。

前に使ったのは、卒業式と入学式かな。

卒業式のとき、四宮くんに告白された時は郁人が近くにいるのを感じたから見られてたらどうしようなんて思っていたのを懐かしく思う。

でも、あたしのことなんて知らないかって思ってた。
まさか中学の頃から好きでいてくれたなんて。
こんな奇跡二度とない、いやなくていいんだ。
ずっと郁人といるからね。



そして、入学式。
受験のとき近隣の中学生が同じ教室で試験を受けるからもちろん郁人とは同じ教室だった。
だから、入学式の時に会えるかもしれないしついに同じクラスになる可能性もなんて思ったら髪の毛をサラサラにしてたよ。

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