大切なもの【完結】
「郁人への思い出はたくさんあるよなぁ」



付き合ってない頃からずっと郁人のこと見てたから。
だから、話したこともないのに思い出だけはたくさんあった。
でも、これからは勝手につくる思い出じゃなくて2人で作る思い出をたくさんつくりたいな。



「…あ」



時計を見れば11時57分を表示していた。



「郁人に電話」



机の上に置いたスマホを手に取る。
一番に〝おめでとう〟って言いたい。



少し前から話そうと郁人に電話をかけるのに



〝ツーツーツー〟



スマホから聞こえてきたのは話中音。



「嘘でしょ」



もう、誰!?
郁人もこんなときにだれかと話すなんてひどい。
なんて約束もしてないのに怒りの矛先を向けられる郁人。



「あ!郁人!」



やっと話中じゃなくなったのは0時3分になってからだった。



『彩香?』



スマホの中から大好きな声が聞こえる。



「もう!誰かと話してた?」


大好きな声を聞いても少し怒っていたあたしは〝誕生日おめでとう〟よりも先にこれだった。

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