大切なもの【完結】
『え?悠貴とさっきまで話してたよ?』


「悠貴!?」



あとで電話してやる!



『悠貴と一時間くらい話してた』



なんて当然のように話す。



「バカー!0時におめでとうって言いたくて11時57分からかけてたよ」


『あ、ごめん』


「もう、誕生日おめでとう」


『ありがとう』



付き合って初めての誕生日。
どうしても一番にお祝いしたかったのに。



『悠貴には祝われてないから、彩香が一番だよ』



あたしの考えが伝わったかのように郁人の言葉があたしに届いた。



「よかった。悠貴にこのあと電話してやろうかと思った」


『なんでだよ』


「だって、一番奪われたらムカつくから」


『ははっ。だからってこんな遅くに悠貴に電話するなんてダメ』



遅いからとかそんな気遣い悠貴に必要だろうか。



「そんな悠貴に気なんて使わなくていいよー」


『そういうわけじゃないけど、まぁいいや』



郁人との電話はそこで終わって〝また明日〟と終わった。

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