大切なもの【完結】
「あいつも俺のこと好きだと思ってたんだよ。俺」



悠貴がぼそっと話し出す。



「…悠貴」


「でも、さ。郁人が〝あの子が呼んでる〟って言いに来た日に終わっわたんだよ。俺の初恋は」



はぁっとため息をつく。



「あの日?」


「あぁ。帰ってきてから郁人のことについてめっちゃ聞かれてさ。あーこれ郁人に惚れたのかって。初恋なんて呆気なく終わるもんよ」



ははっと笑う悠貴。



「…彩香の気持ちはずっと知ってたんだな」


「すきなやつの気持ちなんかすぐわかるよ。だから、さ。お前が彩香の気持ち大事にしてくれないなら俺はあいつ奪うよ?」



ずっと信頼してて悠貴からのいきなりのライバル発言だった。



「奪うなんてそんなの許さねぇよ」


「だったら戻れよ。ここにいんなよ」


「でも、用事あるって出てきたし」



俺はどこまでも意気地無しなんだと自分がいやになる。
そんなのいくらでも言い訳できるのに。
戻るのが怖くてそれを言い訳したがる。

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