大切なもの【完結】
「いいから行けよ!」



悠貴にドンッと背中を押される。



「悠貴?」



悠貴がここまで声を荒らげるのは初めてかもしれない。
いつもは能天気で基本笑ってる悠貴。
悠貴をここまで怒らせてるのは他でもない俺だ。



「たのむから!隙つくんなよ」


「…悠貴」


「彩香が泣いたら抱きしめてやりたくなっちまうんだよ。たのむから彩香のこと泣かさないでくれよ」



そう話す悠貴がもう泣きそうだった。



「お前、ずっと我慢して…」


「言えるわけねぇだろ。郁人しか眼中にないあいつに言ったってあいつを悩ませちまうだけだし、俺はこのまま近くにいれればよかったんだよ」



聞いたことのなかった、悠貴の本音。
俺が我慢させていたのだろうか。



「俺、知らなくて…勝手に悠貴が幼なじみで仲いいからって嫉妬してた」


「嫉妬なんて…もう俺のほうが何年もしてるっちゅーの」



そう話す悠貴は目に光るものを抱えながらも笑っていた。

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